2019年、私は勤務先の保育園で幼児クラスに向けた性教育を始めました。
「幼児に性教育?」と驚かれる方もいらっしゃるかと思います。しかし、いのちの教室が行う性教育は、単に赤ちゃんが生まれることだけにフォーカスしたものではありません。
いのちの教室が掲げる「性教育の4本柱」
- からだの仕組み ── 臓器や神経、五感の働きを知る
- 男女の違い・プライベートゾーン ── 自分と相手の境界線を尊重する
- 妊娠・出産(出生のルーツ) ── 自分はどのようにして生まれてきたのか
- 自分の気持ち・相手の気持ちを知る ── 心の教育
この4つの柱を通じて、子どもたちの「自分を守る力」と「自己肯定感」を育むことを目指しています。
保育の現場で感じた子どもたちの自己肯定感の低さ
私が保育園に入職してすぐ、子どもたちから耳にしたのは次のような言葉でした。
何も気にせず無邪気に走り回っているはずの子どもたちが、こんな言葉を口にしていることに、私は大きな衝撃を受けました。
同時に、私が助産学校時代に卒業研究の題材にした「愛着障害」の影響が、目の前で現れていると感じました。私自身も愛着障害を抱え、長い間心の痛みと闘ってきた経験があります。今振り返ると、苦しんでいた時間は本当にもったいなかった。もちろん過去の経験があっての今ですから後悔はありませんが、同じような経験をする子を少しでも減らしたい——その想いが、「私にしかできない性教育」の出発点となりました。
なぜ「幼児期」なのか
日本の性教育は、他国と比べて大きく遅れています。学校教育では小学4年生から始まりますが、「歯止め規定」という制約があり、外部講師であっても伝えられる内容に限りがあります。
ならば幼児期に届けよう——そう考え、2歳から5歳の子どもたちへの性教育を開始しました。この年齢の子どもたちは驚くほど素直に吸収してくれる、まさに最適なタイミングでした。
からだを知ることが自己肯定感につながる理由
みなさんは自分のからだのこと、どのくらい知っていますか?
正常を知ることは、異常に気づく力を育てることです。「なにかおかしい」と早期に気づければ、自分を守るための行動をとることができます。
私たち人間は動物です。本能を研ぎ澄まし、心身の変化をいち早く察知する力は、本来誰にでも備わっているもの。しかし、学校の授業では「暗記」ありきの内容が多く、からだのことを「自分のこと」として実感しにくいのが実情です。
いのちの教室では、からだのお話から始めます。専門的に言えば「総論」から入るということです。からだ全体を知ることで、根拠に基づいた「自分を守る力」が育まれます。
子どもたちには、聴診器で心音を聴いたり、自分の脈に触れたりと、なかなかできない体験も盛り込みながら、楽しく分かりやすく伝えています。
そして自分を大切にすることは、性的虐待やその他の性犯罪から自分を守ることにも直接つながります。
一般社団法人いのちの教室の設立へ
この活動を、勤務先の保育園だけでなく全国各地で行いたい。その想いから、2025年12月に一般社団法人いのちの教室を設立しました。
性に関するお話を幼児期から当たり前のように聞ける社会をつくり、子どもたちが安心して暮らせる未来を目指して活動してまいります。